ゲイリー・ムーアについて

2010.4.212010.5.25の日記の続きです。

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ゲイリー・ムーアという人とは、彼の音楽とインタビューを通じてしか繋がりがありませんでした。

彼がどんな日常を送ってきたか、ほとんど知ることはありませんでした。

インタビューにおいても、彼の音楽とギターについて訊くだけで、あっという間に時間が過ぎ去っていきました。彼の私生活について触れることは、滅多になかったです。

僕にとっても、その方が楽しかったです。

それでも彼のギターは、どんな言葉を弄するよりも雄弁にその人生を物語っていました。

そのプレイを通じて、彼の喜び、悲しみ、怒りはダイレクトに伝わってきました。

そういう意味では彼はどんなアーティストよりも、自分のプライベートな部分を露わにしてきました。

ゲイリーが亡くなって、最初に思い出したのは、彼が早起きだったことです。

初めて彼にインタビューしたのは1995年5月19日でしたが、日本時間の午後5時に電話しました。イギリス時間だと午前9時です。終わってからBON JOVIを見に東京ドームに行きました。余裕で間に合いました。

彼と初めて対面インタビューしたのは1997年4月20日、場所はロンドンのHalcyon Hotelでした。この時もインタビュー開始が午前10時でした。

それ以外のインタビューでも、開始時間が早かった記憶があります。

1990年代後半、当時の所属事務所の女性も「ゲイリーは毎朝決まった時間に起きるし、スケジュールを組みやすい」と言っていました。

むしろ僕の方が、訊きたい質問があまりに山ほどあって、最後は時間オーバーで「ゴメン、この後もう1本インタビューがあるんだ」「そろそろ出かけなくっちゃ」と言われてしまうのが常でした。

ゲイリーは自分の仕事に対して、常に真摯な姿勢をとってきました。『OLD NEW BALLADS BLUES』(06)、『CLOSE AS YOU GET』(07)、『BAD FOR YOU BABY』(08)と3年連続でアルバムを発表したとき、「毎年アルバムを出して、ツアーを行うなんて、働き者ですね」と言ったら、こんな答えが返ってきました。

「60年代のミュージシャンは、1年に2枚アルバムを出すのが普通だったんだ。1年に1枚なんて、怠け者なぐらいだよ」

ただ、そう言ったあと、彼は自分の言ったことに照れたのか、クスクス笑っていました。真面目一辺倒の堅物ではなく、時にジョークも飛ばす人でした。

彼が亡くなってから1週間、僕は普通の生活を営んできました。

原稿も書いたし、インタビューもしたし、ごはんも食べました。引っ越しもしたし、病院のお見舞いにも行きました。

音楽について書く仕事に就くほど音楽を好きにしてくれた、自分にとって重要な位置を占めるアーティストがもういないという事実は、常に重くのしかかってきましたが、自分の人生は続いていきます。

ゲイリーは「Business As Usual」で「so many have gone, but I know it’s just business as usual」と歌っています。

これは決して去っていった人々を突き放しているのではなく、彼らへの思いを胸に、いつもの日常を続けていくつらさを歌っているのだと思います。

数々の友を失いながら、ゲイリーは常に前に進んでいきました。

これからは我々が、彼のいない毎日を歩んでいかねばなりません。

きのうと先週、2回に分けて引っ越しをしました。

段ボール箱に荷物を詰めるあいだ、ずっとゲイリーのCDを聴いていました。

レコード棚、CD棚、本棚の中には彼の作品や、彼の写真が載った本や雑誌がたくさんありました。

そのひとつひとつに注意を払っていたら引っ越しが終わらないので、感情を押し殺して段ボール箱詰めを続けました。

でも、レコード棚の裏から1994年、BBM『AROUND THE NEXT DREAM』店頭用ディスプレイが発掘されたときは、さすがに涙が出ました。

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17年前、東芝EMI(当時)のオフィスにあったのを、頼みたおしていただいたものです。

ゲイリー・ムーアの音楽を聴き、彼の参加したレコードやCDを集め、たまに彼のギター・フレーズをコピーすることは喜びでした。

とりとめのない文章ですが、僕の人生を、そして世界中のファンの人生をより豊かなものにしてくれたゲイリーに、本当に感謝します。

PS:彼はニュー・アルバム制作に入る前にスペインで休暇をとっていたと発表されましたが、去年後半スタジオで作業していると聞いていたのは何だったのでしょうか…。プリプロダクションとか?

投稿者:

yamazaki666

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