極真会館の大山倍達総裁といえば智弥子夫人(藤巻潤のお姉さん。本名は照子だけど、ある日「今日から君は智弥子だよ!」と宣言された)とのあいだに娘が二人ぐらいいたことはよく知られていますが、韓国にも家庭があって、三人の息子がいたそうです。
その息子クァンボム、クァンス、クァンファが共同ペンネームボム・ス・ファを名乗って書いたのが『我が父チェ・ペダル~息子が語る大山倍達の真実』。
前書きには
「本書に記されている内容は、すべて真実である」
と書かれています。
前半は普段日本に住む父が韓国に戻るときはりんご箱ほどの箱で30個ものお土産を買ってきてくれたとか、サウナが大好きだったとか、好みの俳優がチャールズ・ブロンソンやクリント・イーストウッドだったとか、『ロッキー』とか『ランボー』が好きだったとか、韓国での家庭人・大山倍達という新しい側面を描写しているのですが、後半になると『倍達がゆく』と題して、マス大山のバイオグラフィーとなります。
当然ながら息子たちはその場にいたわけではないので伝聞に基づいて書いているのですが、プロレスの試合中タム・ライスにガチを仕掛けられて、やられる!と思ったマス大山が本能的に三角蹴りで逆襲したとか、酒場で力道山がマイクスタンドを持って襲いかかろうとしたとかいう描写が次々と描かれます。
ムエタイのチャンピオン・ブラックコブラやサバットの達人ボーモン、しまいには有明省吾まで登場します。
どうやら『空手バカ一代』をそのまんまネタ本にしているようなのです。
パリの地下プロレスのチャンピオンの名前がロゴスキーではなくムイシュキンとなっているので、もしかしたら『空手バカ一代』の韓国版『大野望(テーヤワン)』あるいは『風のファイター』をネタにしているのかも知れません。
でも実の息子が「すべて真実である」と断言しているのだから、一面識もない僕がとやかく言えることではありません!
ところで本書の序文は三兄弟と親交のある現・極真会館館長のムン・チャンギュ(松井章圭)が書いています。
本文には死の枕で話すこともままならない大山倍達が「後継者はムン・チャンギュに決めた…」と語ったという一節がありますが、やはり実の息子が「すべて真実である」と断言しているのだから、一面識もない僕がとやかく言えることではありません。
なおWORLD KARATE誌に著者インタビューがあるそうなので、そのへんについての質問があるか読んでみたいのですが、普通の本屋には置いてないので、今度書泉ブックマートに行ったときにでも読んでみます。