GARY MOORE: 2010.5.22 Trondheim Rock Festival, Norway音源を聴いて。

ゲイリー・ムーアは進み続け、変わり続けてきたミュージシャンです。ハード・ロックをやってみたりブルースをやってみたり、テクノロジーに興味を持ってみたり、次のアルバムはどんなものになるのだろう?と世界中のファンを毎回ドキドキさせてきました。唯一無比のギター・プレイにしても変化を続けていて、先日の来日公演で極太ソロを弾きまくる彼がかつてジェフ・ベック・クローンと呼ばれたなんて、信じがたいです。

21年ぶりの来日公演においても観客を生ぬるい懐かしモードに浸らせるのでなく、日本では初めてとなるブルース・セットを披露。自分が同じ場所に留まることのないミュージシャンであることを証明してくれました。

20年間やってきたブルース路線にしても、『STILL GOT THE BLUES』期のブリティッシュ・ブルースのロック的解釈から『AFTER HOURS』でのスタックスへの傾倒、近年もテレキャスの泣きに開眼したり、アコースティック・ブルースやカントリーっぽいテイストの導入など、常に変化してきました。

来日に際して、”人間国宝”という嫌なキャッチフレーズが使われました。単にゲイリーの岩のような顔から安直にイメージしたのだと思いますが、彼の音楽性の変遷と意外なほどに柔軟なミュージシャンシップを完全に無視した、本当に酷い表現だと思います。僕は絶対に使いません。

そのゲイリーが初めて真っ正面から自分の過去に向き合うことになったのが、22日のノルウェーTrondheim Rock Festivalから始まった『Summer Of Rock』ツアーです。

これまで何度か80年代の曲をやったことがある彼ですが、1997年の『DARK DAYS IN PARADISE』ツアーでは2曲をやったのみで、2003年の『Monsters Of Rock』ツアーはTHE YARDBIRDSの「Shapes Of Things」とFREEの「Wishing Well」というカヴァーで”逃げ”を打ち、「過去は振り返らないんだよん」アピール。しかもツアー後になって「あれは金のためにやった。最悪。もうやらない」と悪態をついたりしています。

でも今回はこれまでにない80年代回帰。来年のケルティック・ロック・アルバムに向けてケルティック色のある曲を中心にセットリストを組み、新曲を3曲プレイしているという点では未来にベクトルを向けているとも言えますが、本当にここまで昔の曲を演るとは!既にライヴ音源をネットで落とせますが、20年ぶりに弾く曲でもまったく衰えを感じさせません。新曲も素晴らしいです。

しかし気になるのは、今回のツアーが『Summer Of Rock』と銘打たれていること。10月頃にはブルース路線の新作を発表するという話なので、夏が終わったらこのセットは終わりかも知れません。で、来年発表のケルティック・ロック・アルバムに伴うツアーでは新曲メインで、現在のツアーほど80年代の曲はやらない可能性も…?という懸念もあります。

とまあ、58歳になっても進み続け、変わり続けるゲイリー・ムーアはやはり我々ファンをドキドキさせる存在なのです。

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yamazaki666

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