The Wrestler

ミッキー・ローク主演の映画『The Wrestler』を見ました。大傑作!

ローク演じる主人公ランディ・”ザ・ラム”・ロビンソンは80年代に活躍したプロレスラーで、今なお引退せずバイトをしながらインディーズ団体で試合をしています。入場テーマ曲はQUIET RIOTの「Bang Your Head」で、カーステではCINDERELLAの「Don’t Know What You Got (‘Till It’s Gone)」を聴き、住んでいるトレーラーハウスにはAC/DCのポスターを貼っています。で、オキニのストリッパーを連れて酒場に行くとRATT「Round And Round」にあわせて熱唱。

WXWでの試合ではバンデージに剃刀を仕込んでブレード・ジョブ。続いてCZWネクロ・ブッチャーと有刺鉄線ハシゴテープルガラス画鋲マッチを戦い、教室の壁とかに打ち付けるホッチキスを背中にバチンとやられたりします。試合後、これまでの苛酷なライフスタイルゆえに心臓を悪くしていることが判明。ゲロを吐いて入院します。

“ザ・ラム”には娘がいますが疎遠な間柄で、ストリッパーの忠告もあって少し仲良くなりますが、寝過ごして父娘ディナーに超遅れて「あんたなんか父親らしいこと一度もしたことないし、パパだと思ったことなんてない!アスホール!ファック・ユー!」と罵られます。 ←このへんは『ビヨンド・ザ・マット』のジェイク・”ザ・スネイク”・ロバーツまんま。日本でも安田忠夫がやっていました。

一度は引退しようと思っていた彼ですが、自分にはリングしかない!と確信。ACCEPTの「Balls To The Wall」をBGMに復帰を決意します。で、「心臓が悪いのに試合なんかしちゃダメよ!」とすがるストリッパー(MOTLEY CRUEのTシャツ着用)の声を背に、ROHのファンイベントで行われるかつてのライバル、ジ・アヤトラーとの20年ぶりの試合のリングに向かうのでした。この時だけ入場テーマ曲はGUNS N’ROSESの「Sweet Child O’Mine」。ちなみにジ・アヤトラーを演じるのはWWEにも出ていた時期があるダンスが得意なアーネスト・”キャット”・ミラーです。

なんとか試合を続ける”ザ・ラム”はリング上で心臓がズキンと来ますが、コーナーポストに上がって見栄を切るスプラッシュ必殺技”ラム・ジャム”を敢行。そして…。

エンディングは突如ブルース・スプリングスティーンの新曲「The Wrestler」! この曲は今月発売の新作『WORKING ON A DREAM』にボーナス・トラックとして収録されます。

“ザ・ラム”はミッキー・ローク自身とジェイク・”ザ・スネイク”・ロバーツを合体させたようなキャラで、入場テーマ曲を歌うQUIET RIOTのケヴィン・ダブロウの晩年も連想させます。両国国技館でネイティヴ・アメリカン相手に猫パンチをやっていた時より身体が締まっています。

ちらりとR・トゥルースやブルー・ミーニー、マヌー、ザンディグも顔見せしています。

『レクイエム・フォー・ア・ドリーム』のダーレン・アロノフスキーが監督、うらぶれたレスラーとUSインディーズ・プロレスのバイオレンスと哀愁を描いて泣かせます。変に感動を押しつけていないし、主人公があまりにミッキー・ロークとかぶっていてフィクションと思えません。当初ニコラス・ケイジが主役候補に挙がっていたそうですが、身を退いて正解だと思います。ニコラス・ケイジだとうらぶれ感に乏しく、ギャグ映画になってしまうし。

2009年のベスト映画ナンバー1が早くも登場してしまった感があります。プロレスとかロックとか80年代とか全然知らなくても号泣必至ですが、知っていればさらに泣けます。

プロレス業界の再興のためも総力を挙げてこの映画をプッシュするべきだとは思いますが、試合前の打ち合わせとかブレード・ジョブとかステロイド尻注射シーンとかがあるので、ちょっと難しいかも知れません。なおWWEは「これは一部のインディーズ団体の話であって、ウチはこんなじゃありません」と声明を出しています。

日本公開はいつだか知りません。たぶん未定。 ←今年6月公開だとかいう話ですね。

NEBULA: HEAVY PSYCH / PEEL SESSIONS

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2005年3月に来日、翌2006年に『APOLLO』を出して以来あまり音沙汰がなかったNEBULAですが、一気に2枚もリリースがありました。

『HEAVY PSYCH』は新曲6曲収録のEP。タイトル通りヘヴィ・サイケ調の曲を揃えていて、BPMを押さえてヘヴィなグルーヴを重視していて、ググッと腰のツボを押してくれて気持ち良いです。今日現在アマゾンでは取り扱いしていませんが、CD Babyあたりで入手可能です。なおCD Babyではアマゾンで扱っていないCROATANとかも売っているので、何枚か買って送料をセーブしたい方は併せてどうぞ。

『PEEL SESSIONS』は2001・03・04年のBBCスタジオ・セッションを収録。新旧揃えたプチ・ベストといった感じで、スタジオ・テイクより荒々しくてド迫力です。「Devil’s Liquid」「Full Throttle」「Do It Now」みたいな鬼アップテンポ・ナンバーも入れて欲しかったけど、かっちょよさに身震い&身悶えします。

2008年パーソナルベスト10アルバム

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1. PORTISHEAD: THIRD

2.EARTH: THE BEES MADE HONEY IN THE LION’S SKULL

3.PENTEMPLE: O))) PRESENTS PENTEMPLE

4.AC/DC: BLACK ICE

5.TORCHE: MEANDERTHAL

6.MOSS: SUB TEMPLUM

7.AIRBOURNE: RUNNIN’ WILD

8.HARVEY MILK: LIFE… THE BEST GAME IN TOWN

9.CANDLEMASS: LUCIFER RISING EP

10.KITTY, DAISY & LEWIS: KITTY, DAISY & LEWIS

今年は1年中ずっと原稿を書いていて、1990年以来毎年必ず1度は外国に行っていたのが途切れました。それとは関係ないですが、曲の良し悪しよりも轟音にどっぷり圧されていた気が。寂しかったのかも知れません。PORTISHEADの11年ぶりの新作は”かっこいいPORTISHEAD”というまさかの新境地を切り開き大成功。EARTHはアメリカーナの深い闇にいざなわれて遺骨となって発見されます。PENTEMPLEはSUNN O)))『BLACK ONE』の世界観をさらに掘り下げた悶殺盤。AC/DCは超最高という以外言葉が見つかりません。TORCHEは申し分なくヘヴィでありながら秀曲揃いで、ライヴも素晴らしかったです。MOSSは地獄へとつづくピュア・ドゥーム。AIRBOURNEは”AC/DCとMOTLEY CRUEがテストで0点をとった”極上低偏差値ロックンロール。HARVEY MILKはバンドのヘヴィ・サイドを強調した音でありながら一筋縄ではいかない、聴き手への挑戦状。CANDLEMASSはコーラスが耳から離れない新たなるメタル・アンセム。KITTY, DAISY & LEWISは21世紀イギリスでいきなりブルースをオシャレにしてしまったコペルニクス的転回。

例によってですが気分によって順位とか選出アルバムとかは変わるし、あと能書きも後で追加修正する場合があります。思いつきでやっているのでご容赦下さい。

それ以外よく聴いたやつ。好きだからよく聴いたとは限りませんが、どれも好きです。(順不同):

TV ON THE RADIOとかDEERHUNTERは聴いたし良いと思ったけど、ベストに入れるほどではなかったです。

2008年は拙ブログをご覧になっていただき、有り難うございました。2009年もてきとうにピャウとかうんことか書いていきますので、よろしくお願いします。と、1月4日に白々しく書いてみたりします。

CHARLIE LOUVIN: SINGS MURDER BALLADS AND DISASTER SONGS

THE LOUVIN BROTHERSの片割れの爺さんの新作。81歳にもなって殺人&事故死だらけのコンセプト・アルバムで、「ナイフを胸にぶっ刺した」とか「蒸気機関車が事故って運転手が蒸し焼きになった」とか歌っています。THE LOUVIN BROTHERSについてはこちらでもちらっと。

TROUBLE: LIVE IN L.A.

公式サイト直販の自主リリース第5弾はWARRIOR SOULのコリー・クラーク加入後初音源となる2008年6月、ロサンゼルスでのライヴ。正式な日付と会場は判りません。やっすいカラーコピーインサート1枚付きCD-Rです。オフィシャル盤なのでサウンドボード録音で、音質は良いです。TROUBLEクラシックスを次々とプレイしていて胸が躍りますが、必ずしもコリーの魅力がフルに発揮されているわけではない気がします。あんまりコリーのキャラが出まくっていてもTROUBLEらしさが殺がれてしまうし難しいところですが、ここでは”普通にちゃんと歌えるシンガー”に留まっていて、やや窮屈に聞こえます。2009年に出るという新作アルバムまで新生TROUBLEの本領発揮は待たねばならない様子です。あと、ライヴを完全収録しておらず、CD収録時間がいっぱいになった以降をカットしているので、おそらく演奏された筈の「The Tempter」「Psychotic Reatction」「All Is Forgiven」などが収録されていません。

で、公式サイト直販は送料がえらく高いです。基本的にCD代と同額がかかると考えればいいみたいです。しかし最近またLeaf Houndの消息が途絶えていて、Hellride Musicとかでも本作は現時点で扱っていないので、ここで入手するしかありません。まあパッケージがしょぼいとはいえ、中身は2,500円ぐらいの価値はあると思うのですが。

ところでWARRIOR SOULのmyspaceで2009年にジャパン・ツアーをやると言っているのですが、具体的な話があるのでしょうか?

2008-12-28

新宿タワレコでBoris with Michio Kurihara『Cloud Chamber』を買ったのですが、J-POPコーナーのポリシックスと掘ちえみコーナーの間にありました。

クマリでカレー → 新宿 → 初台HUB

KHANATE『CLEAN HANDS GO FOUL』 & KTL『KTL IV』

1月9日に

の日本盤CDが出ます。一足先に入手、ヨダレを垂らしながら愛でています。

KHANATEの遺作である『CLEAN HANDS GO FOUL』は『CAPTURE & RELEASE』と同時期にレコーディングされた音源ですが、残りものというよりも、鍋をさらった後に底に溜まっているドロドロみたいな内容で、ラスト「Every God Damn Thing」では延々32分52秒にわたって「みんな死んじゃえ」と呪詛を吐き散らしています。

KTL『KTL IV』は劇伴音楽から解き放たれて制作された最初のアルバムで、プロデュースはジム・オルーク。ギター&エレクトロニクスのノイズ核融合が凄まじい昂ぶりをかもします。先日の来日公演の会場で売るはずだったけど間に合わなくて別途通販となった『PARIS DEMOS』がボーナス・ディスクとして付けられています。本編と同じ曲でも構成がずいぶんと異なっています。

日本盤はこれまでのSUNN O)))/KHANATE同様のゴージャス紙ジャケ仕様。KTLの最初の3枚もぜひこの仕様で出して欲しいです。

Sam Montgomery

Theme Time Radio Hourの11月30日放送分『Fruits』でサム・モンゴメリーの「Where the Sweet Old Oranges Grow」を聴いて、おっと思いました。モンゴメリーは生前、1936年に12曲のみをレコーディングした戦前ニューヨークのブルースマンで、そのうち8曲がコンピレーション『BLUES AND GOSPEL FROM THE EASTERN STATES』に収録されています。「Where the Sweet Old Oranges Grow」はココモ・アーノルド「Old Original Kokomo Blues」とロバート・ジョンソン「Sweet Home Chicago」を繋ぐミッシング・リンクで、オランダ絵画に例えるならレンブラントとフェルメールを繋ぐカレル・ファブリティウスのような存在ではないかと。しかし上記コンピレーションには「Where the Sweet Old Oranges Grow」は収録されていないのでした。