無言歌 @試写会

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ワン・ビン(王兵)監督の映画『無言歌』を見ました。

1956年、毛沢東は”百花斉放百家争鳴”を提唱、共産党に対する批判を歓迎すると宣言しますが、調子こいて批判する人がたくさん出てきたせいか1年で撤回、”反右派闘争”で粛正しまくります。職場の宴会で上司が「無礼講だ」と言うから本当に言いたいことを言ったら激怒されるようなものですね。

で、この映画の舞台はゴビ砂漠の真ん中にある強制収容所(というか土に穴を開けただけ。タトゥーインの住居を汚く狭くした感じ)。農場の開墾を名目にしていますが、砂漠の真ん中なので、ほとんど無意味。劣悪な生活環境と栄養失調で死なせるために収容している感じです。食事の雑炊は穀物がまばらに入っているだけなので、ネズミを殺して食べたり、囚人仲間の吐いたゲロを食べたりします。囚人は連日ガンガン死ぬので、たまに尻やスネ肉をそぎ取って食べます。そんな描写が、過度にメロドラマチックになることなく、淡々と描かれます。空が青く地平線が丸いです。

囚人の一人・董さんの嫁さんがやって来て、そこらへんに埋められている夫の亡骸を掘り起こそうと数日を収容所で過ごします(何百人も埋まっているので、見つけ出すのが大変)。男の犯罪者だらけのところに女が一人で泊まって、普通だったらレイプと暴力の嵐を期待しますが、囚人たちは元々インテリゲンチャだし、なにぶんごはんを食べていないので、特に何も起こりません。いちおう物語の最後にオチはつくのですが、やはり淡々としていて、空が青く地平線が丸いです。

原題は『夾辺溝』、英語題は『THE DITCH』なのですが、邦題『無言歌』はそんな淡々としながら作品を貫く詩情感をタイトルにしたのだと思います。

ワン・ビン全作一挙上映を今週金曜までやっているので、前作『名前のない男』を見に行きたいです。

投稿者:

yamazaki666

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