リミッツ・オブ・コントロール 【軽度のネタバレ】

ジム・ジャームッシュ監督の最新作『リミッツ・オブ・コントロール』を見てきました。

9月19日(土) シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9、シネ・リーブル池袋、吉祥寺バウスシアター 他にて全国ロードショー   だそうです。

ジャームッシュというとヴィム・ヴェンダースと共に、悪しき単館系サブカル馬鹿をたくさん育てた張本人という嫌な印象があります。もちろん本人は良い映画を作ろうとしているわけで、悪いのはファンの方なのですが。でも本当に悪いのは単館系映画というと『クイーンコング』が最初に頭に浮かぶ僕なのかも知れません。しかし、ジャームッシュ映画にはいろんなミュージシャンが出てくるわりには、『クイーンコング』主題歌以上に記憶に残るテーマソングはありません。

ジャームッシュ映画は全然見ていないと思っていたら、『イヤー・オブ・ザ・ホース』『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ミステリー・トレイン』『デッドマン』と、4本も見ていました。えっへん。しかしいずれもストーリーは全然記憶に残っておらず、『ミステリー・トレイン』はスクリーミング・ジェイ・ホーキンスとジョー・ストラマーと黒乳首しか覚えていません。エルヴィスに関係あったようななかったような。あと『ナイト・オン・ザ・プラネット』と『ナイト・オブ・ザ・コメット』が同じ映画だと思っていたのは内緒です。

とまあジャームッシュには屁の思い入れもないわけですが、今回はBorisの音楽が全面的に使われているということで、見ないわけにはいきますまい。というわけで、試写状を恵んでもらってのそのそと行ってきたのでした。有り難うございます。

唇の分厚い黒人(趣味:気功)がある任務を与えられて、2杯のエスプレッソを飲みながらカフェにいると、伝令がやってきて、いろんなメッセージをマッチ箱に入れて渡してきます。で、ついでに「ところで音楽って好き?」とか「ところで映画って好き?」とか雑談をしていきます。工藤夕貴もそんな伝令の一人として出てきます。黒乳首は出しません。「ところで分子って好き?」とか訊きます。あとジョン・ハートも伝令の一人です。ジョン・ハートというと『エイリアン』で最初に死んだのとエレファントマンだったので、僕の中では名優ということになっているのですが、世間的にはどうなのでしょうか?ちなみに僕の中ではマイケル・ヨークも『三銃士』『オリエント急行殺人事件』『2300年未来への旅』『ドクター・モローの島』に出ていたので名優です。

それでBorisの音楽が全編使われまくりです。唇の分厚い黒人はスペインにいて、カフェで伝令からマッチ箱を受け取る以外することもないので、毎日ソフィア王妃美術館に行ったりしますが、食い入るようにアントニオ・ロペス・ガルシアの絵を見る彼の鼻の穴どアップに重低音ギター・ノイズがズズーンと重なって大迫力です。で、ホテルに戻ると全裸のメガネっ娘がいて、「ところで私の尻って好き?」と訊ねます。唇の分厚い黒人は見ようによってはデューク東郷に似ていますが(白ブリーフ愛用という点も共通)、「仕事中はセックスしない」というポリシーがあるのでヤリません。

唇の分厚い黒人の任務は「自分を偉いと思い込んでいる男を墓地に送りこむ」というもので、ギャングのボスを暗殺するのかな、と最初は思わせますが、あまりに何度も何度も何度も伝令とマッチ箱交換をして、マドリッドから電車に乗って何箇所も地方都市を回るので、まさかそんな単純な任務なわけもないし、一体どんな任務なのだろう?と期待させます。そうしたらなんと、ギャングのボスを暗殺するという任務だったのでした!『ブラック・レイン』のヤクザの親分宅みたいに、田舎のえらく見晴らしのいい所に敵のアジトがあります。

で、アジトの近所の田舎町が、モロにマカロニ・ウェスタン映画に出てきそうな感じでした。みなさんご存じのとおりマカロニ映画はイタリア資本だけどスペインでロケしていることがけっこうあって、かつてのロケ地をわざわざ回っているガリンゴさんのような凄い人もいるわけですが、その町で唇の分厚い黒人に接触してくる伝令のコードネームが”メキシカン”だったり、確実に狙っていますよね。で、その町の駅に降り立つシーンで流れるのがEARTHの「Omens And Portraits 1: The Driver」。マカロニに出てくる、ありそうでどこにもないアメリカーナといえばニール・ヤングが手がけた『デッドマン』スコアもそうですが、EARTH『HEX: OR PRINTING IN THE INFERNAL METHOD』が出たときに比較する人もいた記憶があります。

余談ですが今年4月、来日したISISのアーロン・ターナーに「最近ゲットしたレア盤は?」と訊いたら、「『デッドマン』サントラのアナログ盤!」と答えていました。アルバムが出た1996年というとアナログが絶滅の危機に瀕していた時期なので、あまり出回らなかったそうです。

Boris(with SUNN O)))とかwith栗原ミチオとかも含め)の音楽はいずれも既発音源が使われており、サントラ盤CDにはそれを独自エディットしたものが収録されています。これだけ大々的にフィーチュアされたことにより(エンド・タイトルではMusic by Borisとバッチリでかくクレジットされています)、Borisオシャレ化計画が大きく前進したといえるでしょう。とはいっても、同じジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』(見てない)で「Dopesmoker」、やはり単館系サブカル御用達のハーモニー・コリンの『ガンモ』で「Dragonaut」が使われたSLEEPがちっともオシャレになっていないので、Borisもあまりオシャレにならないかも知れません。

そういえばハーモニー・コリンの2007年の『ミスター・ロンリー』はマイケル・ジャクソンそっくりさんネタの映画ということで、再評価されるかも知れませんね。

『リミッツ・オブ・コントロール』に話を戻すと、エンディング・クレジットのspecial thanksでTadashi HamadaとGreg Andersonが出てくるのも注目です。

どうでもいい話ですが、最初のシーンで唇の厚い黒人が便所で気功をやっているとバックでピロピロピョーンという音が流れますが、おそらくヨーロッパ圏内の空港にいくつか行ったことがある人は、フランスの空港(たぶんド・ゴール空港)なのだと判ると思います。うちの兄は「『超神ビビューン』で似た音が使われている」と言っていました。

あっ、さらにどうでもいい話ですが、このブログの存在が兄夫婦にバレていたことが判明。こういうのって家族にバレるのが一番ヤですよね。卍うんこうんこ卍

というわけで、面白かったですよ。

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で、『デッドマン』DVDが1,109円で再発されます。これはさすがに安い!

ニール・ヤングのやっつけ即興演奏サントラを聴くためだけでも買う価値はありますよ。

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オジー・オズボーンの1982年4月28日メンフィスと12月19日グラスゴーの音源はどちらも音質も演奏も良いですね。

投稿者:

yamazaki666

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