SAINT VITUS

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SAINT VITUS
(1984 / SST CD 022)
doom metal

80年代ドゥーム・メタル巨匠のデビュー・アルバム。
BLACK SABBATHをルーツにしながらNWOBHMをクッションにしたスローでドゥームな激重メタル・サウンドは'84年当時にはまるで顧みられなかったものの、現在では神格化されている。
本作は全5曲、35分と短めだが、インパクトは強烈。リリース当時からオールドファッションだった音楽性が16年を経たことで理想的な形で熟成した、美味極まりない作品だ。
1曲目のアップテンポ・ナンバー「Saint Vitus」からいきなり名曲。バンド名をテーマ曲にしたドゥーム・ナンバーとしては「Angelwitch」「Sign Of The Wolf (Pentagram)」と並ぶ最高峰だ。
後半3曲「Zombie Hunger」「The Psychopath」「Burial At Sea」はいずれも7分を超える大曲ながら、最後までまるで飽きさせない。極重リフに身を任せてしまえばもう天国。
ダークながらキャッチーなNWOBHM風の「White Magic/Black Magic」も素晴らしく、要するに全曲必聴!
総帥デイヴ・チャンドラーのギターはトニー・アイオミをさらに重く低くしたもので、5曲ともそのリフが鈍くドスを効かせている。スコット・リーガースのヴォーカルは後任者のワイノと較べると個性不足ながら、どこか吹っ切れていない歌い方がズズズとのめり込ませてくれる。
ややこもり気味の音質もバンドのサウンドに"味"を感じさせる結果となっており、すべての欠点を長所に転じてしまった、まさに死角なしの名盤だ。
今日でこそステータスを確立しているドゥーム・メタルだが、当時はあまりに重く遅いサウンドは受け入れられなかった。『SST』と契約したのはオーナーのグレッグ・ジン(BLACK FLAG)がBLACK SABBATHフリークだったこともあるが、当時彼らが"オルタナティヴ"な位置にあったことも意味しているように思える。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★★



THE WALKING DEAD
(1985 / SST042)
doom metal

デビュー・アルバムに続いてリリースされた3曲入り12"。
11分44秒のドゥーム叙事詩「The Walking Dead」を核とした内容。リフ、ヴォーカル、メロディなどひとつひとつの要素を挙げると何ということのない曲なのだが、そんなレベルを超えた強烈なうねりが脳を弛緩させてくれる。ほとんど全編ワン・リフで引っ張ってしまう強引な魔力を持った、これぞ隠れた名曲だ。
「Darkness」「White Stallions」はJUDAS PRIESTをドゥーム化したようなファスト・ナンバー。曲自体は良いが、ハマリ度は「The Walking Dead」にはるか及ばない。
「White Stallions」は『HALLOW'S VICTIM』『HEAVIER THAN THOU』にも収録されたが、他2曲は本作でしか聴くことが出来ない。
この内容で未CD化・廃盤のため、本当なら1万円ぐらいのプレミアが付いてもおかしくはないのだが、中古盤店では400円ぐらいで売られている(涙)。
2001年8月にブートレグ・レーベル『Sons Of Sabbath』から『HALLOW'S VICTIM』とのカップリングでCD発売された。たまに針音がパチパチするが音質・ジャケットは良好。300枚限定プレス。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★



HALLOW'S VICTIM
(1985 / SST052)
doom metal

ストレートなメタル化が図られた2ndアルバム。
彼らの作品で最もドゥーム度が低く、「Mystic Lady」「Prayer For The Masses」の一部を除くとスローな曲はないものの、アメリカンB級NWOBHMスタイルの作品として聴くとかなりの充実度。結成当初TYRANTと名乗っていただけあり、70年代JUDAS PRIESTを思わせるナンバーも少なくない。
時代を意識したのか、スラッシュ・ナンバー「Hallow's Victim」も収録。
SAINT VITUS"らしくない"作品ではあるが、再評価されてしかるべき隠れた秀作。
彼らの作品が一挙CD化された際に何故か本作だけが洩れ、現在に至るまでCD化されていない。同じく未CD化の『THE WALKING DEAD』12"とのカップリングで再発して欲しいものだ。
本作を最後にヴォーカリストのスコット・リーガースが脱退。
2001年8月にブートレグ・レーベル『Sons Of Sabbath』から『THE WALKING DEAD』とのカップリングでCD発売された。たまに針音がパチパチするが音質・ジャケットは良好。300枚限定プレス。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★



BORN TOO LATE
(1986 / SST CD 082)
doom metal

東海岸ドゥームの覇王だったTHE OBSESSEDのシンガー、スコット"ワイノ"ワインリックが西海岸に渡りSAINT VITUSに加入して生み出した歴史的名作。
前作ではメインストリーム・メタルへの色気も見せた彼らだが、本作は全編怒涛のドゥームの嵐。
「街を歩くと/みんな俺を指さす(中略)/俺がゾンビみたいだって言う/頭がクルクルパーだって/俺の歌がスロー過ぎるって/でも連中は分かってないんだ!」と歌う1曲目「Born Too Late」は80年代のMTVメタルに対する宣戦布告。バドワイザーの空箱を抱えて路上に倒れるメンバー達をあしらった裏ジャケットも含め、ドゥーム馬鹿宣言といえるアルバムだ。
ワイノは水を得た魚のようにド迫力ヴォーカルを聴かせており、よりヘヴィに、ドゥーミーに、ノイジーになったデイヴ・チャンドラーの鬼気迫るギター・プレイも凄まじい。
危険なほどにドゥームな名盤。
CD化の際に12"『THIRSTY AND MISERABLE』全曲が追加収録された。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★★


(ジャケット写真がありません。お持ちの方はご連絡下さい)

THIRSTY AND MISERABLE
(1986 / SST 119)
doom metal

2枚目の12"ではBLACK FLAGをカヴァー。『DAMAGED』収録のオリジナルがストレートなハードコアだったのに対し、見事にファスト・ドゥーム・アレンジに仕上げている。
歌詞の内容も「もっと酒を飲みたい。もうすぐ酒屋が閉まるから今すぐ行こう」という、『BORN TOO LATE』に通じるバカなもので最高にカッコイイ。
「Look Behind You」「The End Of The End」はアップテンポのナンバーだが、SAINT VITUS流のドゥーミーなサウンドを堪能できる。
現在では『BORN TOO LATE』CDで全曲を聴くことが出来る。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★



MOURNFUL CRIES
(1988 / SST CD 161)
doom metal

ワイノ参加第2弾はよりドラマチックな暗黒ドゥーム・メタルに接近。
DIOやCANDLEMASSにも通じる大仰な世界観は「Born Too Late」「Thirsty And Miserable」の生々しいストリート感覚とは一線を画するものだが、ラストの名曲「Looking Glass」を筆頭にスケールのでかさは圧巻だ。
そんな路線変更の要因のひとつとして、ワイノがより深くバンドに関わるようになったことがあるだろう。彼は前述の「Looking Glass」と「Bitter Truth」と全6曲中2曲を書いており、3曲でギターもプレイしている。
バンドのサウンドに安定感が生まれた、まさに磐石のアルバム。『BORN TOO LATE』の一触即発のスリルはないものの、日本のドゥーム・メタル・ファンには本作の方がアピールするのでは?

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★



V
(1989 / Hellhound/Roadrunner RR8989-2/HELL005)
doom metal

デビュー以来の古巣『SST』を離れ、ドイツ『Hellhound』と契約しての第1弾。アメリカではアルバムが売れず、ライヴも閑古鳥状態だったため、彼らが比較的支持されているヨーロッパに活動拠点を移したそうだ。
5枚目のアルバムということで『V』と名付けられたが、火山爆発をバックにVの字が輝くジャケットは思い切りカッコ悪い。
デイヴ・チャンドラーのソングライティング、リフ・メイキングが充実しまくりで、中でも「Patra (Petra)」「Ice Monkey」のリフはドゥーム・メタル屈指の名リフ。「Children Of The Grave」を思わせる「Angry Man」も素晴らしい。
また、チャンドラーの歌詞も巧みになっており、「Born Too Late」と同コンセプトの「Living Backwards」もずっと成熟した歌詞を聴ける。
ワイノは本作では「Ice Monkey」のみを書いており、ギターもこの曲でしか弾いていないが、そのヴォーカルは全編を通して絶品。
「When Emotion Dies」ではテンポのズレた女性の語りを入れるなど実験的な要素も取り入れているが、あくまで味付け程度だ。
本作リリース後にワイノはTHE OBSESSED再結成に走り脱退するが、有終の美を飾った作品と言える。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★



LIVE
(1990 / Hellhound HELL010)
doom metal

'89年11月10日、『Circus Gammelsdorf』(ドイツ?)で録音されたライヴ・アルバム。
全67分に11曲が収録されており、そのうち8曲がベスト盤『HEAVIER THAN THOU』にも収録されたナンバーと、彼らの代表曲がライヴ・ヴァージョンで詰まっている。
おそらくオーヴァーダビング無しの一発録りライヴで、ジャケットも含め"オフィシャル・ブートレグ"に近い内容だが、当時の彼らの熱い演奏を堪能できるのが嬉しい。
オープニングから「Living Backward」「Born Too Late」と畳みかけ、アンコール「Mystic Lady」「Clear Windowpane」まで炎上しまくるステージは圧巻。
ただ残念なのがラスト「Clear Windowpane」〜ドラム・ソロ〜ギター・ソロ(『トワイライトゾーン』『バットマン』テーマ含む)で大団円を迎えるまでにフェイドアウトしてしまうところ。
また、スコット・リーガース在籍時の「War Is Our Destiny」「White Stallions」を歌うワイノがあまり熱さを感じさせないのも残念だ。
それでも聴き所は満載のため、ぜひともチェックしてもらいたい。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★



HEAVIER THAN THOU
(1991 / SST CD 266)
doom metal

『SST』時代の4枚のアルバムからのベスト盤。
全14曲のうち10曲がワイノ時代、しかも7曲が『BORN TOO LATE』からの曲と偏った選曲だが、楽曲の質を考えると当然かも。未CD化の『HALLOW'S VICTIM』から2曲が収録されているのも嬉しい。
全曲が既発曲だが、彼らの全アルバムが廃盤のため、見かけたら押さえておく価値はあるだろう(と言っても本作も同時に廃盤となっているが)。
黒地にロゴとタイトルだけのジャケット、紙っぺら1枚のブックレットに面白味がないのは残念。とはいえ、内容は極上だ。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★★



C.O.D.
(1992 / アルファ ALCB-667)
doom metal

『V』発表後にワイノが脱退したため、元COUNT RAVENのクリスチャン・リンダースンを迎えて制作した6枚目のスタジオ・アルバム。
デイヴ・チャンドラーは"D.C.ヴァイタス"と名乗っている(本作のみに終わったが)。
強烈なキャラクターを持つワイノが不在ということでインパクトは減少したものの、路線自体は『V』の延長線上。プロデュースはドン・ドッケンが手がけているが、それによる音楽性への変化は特に感じられない。
ただ、変化がないことが彼らの首を絞めていることも事実。彼ら自身が創り上げたドゥーム・メタルのフォルムにこだわるあまり枠にはまっていて、これまでの彼らの作品の倍、60分以上の長丁場を聴き通すのは正直疲れる。
本作がそれなりに高品質なドゥーム・メタル・アルバムであることは確かだし、聴いて楽しめることも事実だが、初期の神懸かり的なパワーは感じられない。
それでも後半になるとかなり盛り返し、「Get Away」など素晴らしい曲もあるなど、8ッの評価は出来るアルバムなのだが...。
ラスト「Hallow's Victim」は同題の2ndアルバムに収録されていたタイトル曲。オリジナルはスラッシュ・ナンバーだが、本作ではぐぐっとBPMを落としている。
SAINT VITUSの作品で唯一日本盤がリリースされた。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★



DIE HEALING
(1995 / Hellhound H0035-2)
doom metal

クリスチャン・リンダースンを解雇、オリジナル・シンガーのスコット・リーガースを復帰させたラスト・アルバム。
デビュー時のメンバーに戻って意気込みの感じられる作品に仕上がっており、デイヴ・チャンドラー自らが「俺は還ってきた!」と歌う「Just Another Notch」を収録するなど気合満々だが、往年のマジックは感じられず、『Hellhound』レーベルの中堅っぽいB級ドゥーム・メタル・バンドになってしまっている。
デビュー時のB級臭さは外部に向けてギラギラとしたエネルギーを発散していたが、本作はドゥーム・メタル・ファンにしかアピールしそうもないのが残念だ。
「In The Asylum」など聴きどころはあるし、有象無象の『Hellhound』系バンドと較べるとずっと優れた作品なのだが、彼らの全作品中最後に聴けばいいだろう。
本作を最後にバンドは消滅、デイヴは一時ストリップ小屋で用心棒をしているという噂が流れたが、真偽のほどは不明。

(00/07/18)
★★★★★ ★★★