EARTHLESS INTERVIEW 2014.6.6




2015年1月、遂に初来日公演を行うヘヴィ・サイケデリック・ロック・バンド、EARTHLESSのドラマー、マリオ・ルバルカバへのインタビューです。

2014年1月に来日が決定しながら、直前で中止になってしまったEARTHLESSですが、ちょうど1年目のリベンジが実現することになりました。

そのライヴの凄さによって神格化されている彼らのステージが、ETERNAL ELYSIUMとのダブル・ヘッドライナー・ツアーという形で日本で繰り広げられる日が来たことは、嬉しくてなりません。

実はドラマーのマリオ・ルバルカバは2014年6月、パンク&ハードコア界のスーパーグループ、OFF!の一員として来日しており、その際にインタビューをすることが出来ました。

マリオの音楽キャリアや影響を知ることで、EARTHLESSの音楽世界にさらに一歩深く踏み込んでいくことが可能になると思います。

なお、Yahoo!ニュース記事も読んでいただけると嬉しいです。


(インタビュー:山崎智之/uploaded 2015.1.3)
(感謝:ETERNAL ELYSIUM






●EARTHLESS & ETERNAL ELYSIUM JAPAN TOUR 2015

1月9日 (金) @ 岐阜・柳ヶ瀬 ANTS
open 18:30 / start 19:00 w/DUB 4 REASON, JUNKY WALTZ

1月10日 (土) @ 大阪・難波 BEARS
open 17:30 / start 18:00 w/BIRUSHANAH, ITHAQUA

1月11日 (日) @ 名古屋・栄 RED DRAGON
open 18:00 / start 18:30 w/CROCODILE BAMBIE, nibs

1月12日 (月・祝) @ 東京・新大久保 EARTHDOM
open 18:00 / start 18:30 w/Dhidalah
live lightshow by liquidbiupil / DJ Hige

1月13日 (火) @ 東京・西荻窪 PITBAR
open 18:30 / start 19:00 2 band tour final party
live lightshow by liquidbiupil / DJ Veppy

詳細は特設サイトまで。


 EARTHLESS『FROM THE AGES』





●2014年1月の来日公演が延期になってしまったのは残念でした。
うん、俺もすごく残念だったよ。これまで20年以上ツアーしてきて、中止したことがなかったんだ。でもメンバーの家族の健康の問題で、仕方がなかった。幸い深刻な事態は脱して、安心しているよ。

●今回はOFF!の一員として来日したわけですが、BiSと同じステージに立った感想は?
…まあ、シュールだったね。彼女たちのファンの熱狂ぶりは、ハードコアのライヴより熱いぐらいだったよ(笑)。彼女たちの音楽も、眼を開かせるものだった。ああいうスタイルの音楽にはあまり接したことがなかったんだ。とても…異なっていた(笑)。ただ、俺たちはアイドル・ポップを自分たちより低く見るつもりはないし、面白い経験だったよ。ライヴの後にはTシャツを交換したり、いい娘たちだった。

●ピュアなハードコア・ファンからは、アイドルと共演することに対する批判はなかったですか?
特になかったよ。まあ、パンク原理主義みたいなリスナーがいることは知っていたよ。数年前、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの前座をやったときなんか、えらく批判されたんだ。「あんなセルアウトの連中と一緒にやるな」とかね。俺たちは彼らがセルアウトだとは思わなかったし、良いバンドだから、喜んで一緒にやったよ。

●OFF!はパンク/ハードコアのスーパーグループですが、どのようにして結成したのですか?
元はといえば何年も前、ROCKET FROM THE CRYPTがディミトリ(・コーツ)のいたBURNING BRIDESと一緒にツアーをやったときに始まったんだ。そのツアーでロサンゼルスのショーをキース・モリスが見に来て、俺とディミトリと知り合った。それから数年後、俺はBURNING BRIDESの代役ドラマーとしてツアーをすることになって、ディミトリと一緒にやるようになったんだ。その後、共通の友人が「キースが何かやるみたいだから、電話してみたら?」と彼の電話番号を教えてくれた。キースは新しいプロジェクトを結成するということで、そのときは教えてくれなかったけど、ギタリストはディミトリだったんだ。それから3曲のラフなデモの入ったCDを送ってもらって、やってみることにした。それからREDD KROSSのスティーヴン・マクドナルドがベーシストとして加わったんだ。みんな別のバンドのスケジュールがあったり、家族と過ごす時間が必要だったりしたんで、なかなかスタートを切れなかったけど、最初のリハーサルをしてからは、あっという間だった。

●BLACK FLAGやCIRCLE JERKSで活躍してきたハードコアの生ける伝説であるキース・モリスと一緒にやることで、緊張しませんでしたか?
キースがやってきたことには最大の敬意を持っているし、彼の生み出してきた音楽は大好きだけど、俺自身何十年もミュージシャンをやってきたし、さすがにファン気質は消えて、彼を人間として見ることが出来るよ。

●さっきディミトリがBURNING BRIDESに“いた”と言っていましたが、もうBURNING BRIDESはやっていないのですか?
うん、BURNING BRIDESはディミトリと奥さんのメラニーのバンドだからね。子供が生まれて、メラニーは家族のことを優先しているから、BURNING BRIDESとしての活動はしていないんだ。

●前回日本に来たのは2013年7月のフジ・ロック・フェスティバルで、ROCKET FROM THE CRYPTのドラマーとしてでしたね。
うん、そうだ。すごい豪雨だったのを覚えているよ。

●ライヴ前にオーガナイザーが「雷雨になった場合、途中で中断もあり得る」と言っていましたが、バンドもそのことは告げられていましたか?
ちょっと前のことだからあまり覚えてないけど、教えてもらってなかったんじゃないかな?雨の中でみんなが盛り上がって、湯気が立っていたのが記憶にあるよ。

●1997年の第1回フジ・ロックで、台風のせいで2日目が中止になったことを踏まえて、豪雨に対しては主催者がナーバスなのかも知れませんね。
それは知らなかったよ。

●2013年のフジ・ロックではROCKET FROM THE CRYPTのメンバー全員がホテルの浴衣を着てステージに登場したと思ったら、そのままステージを横切って退場してしまったのが面白かったです。
ああ、やったなあ(笑)。誰のアイディアだったかな、ホーン奏者のジェイソン(JC2000)だった気がする。

●OFF!のステージでキースが「マリオは2、3回日本に来たことがある」と言っていましたが、そんなに来日していたのですか。
これが3回目だよ。ROCKET FROM THE CRYPTでフジ・ロックに出演したときと、そのずっと前、1989年にスケートボーディングで来たんだ。当時俺はトニー・アルヴァのチームでアマチュア・スケーターをやっていて、プロモーションでオーストラリアと日本を回ったんだ。 近日プロ・デビューする若手スケーターということで、ディストリビューターやショップの人達と会ったり、デモンストレーションをしたよ。今俺は41歳だけど、まだ16歳のときで、すごいカルチャー・ショックだった。思い出に残っているのは、レコード店に入ったら、NAPALM DEATHとSxOxBのライヴのフライヤーが置かれていたことだった。あと5日間日本にいたら見れたのに!と悔しかったよ。しかもビル・スティアーとリー・ドリアンのいる、俺にとっての黄金期ラインアップのNAPALM DEATHだったんだ。そのフライヤーは今でも持っているし、NAPALM DEATHとSxOxBのスプリット・シングルも買ったよ。

●あなたがプロスケーターとして出演しているビデオやDVDはありますか?
Physicsという会社から出た『Dream Reality』、ATMが出した『Come Together』、それからアルヴァのレーベルからの『Young Gunz』に出ているよ。どれも廃盤だと思うけど、なかなかクールなビデオだったと思う。音楽もクールだったよ。

●2001年にEARTHLESSを結成したのは、サイケデリック・ロックをプレイするためだったそうですが、最初期に目標としたサウンドはどんなものでしたか?
EARTHLESSの始まりは俺がROCKET FROM THE CRYPTに参加するために故郷のサンディエゴに戻ってきて、マイク・エギントン(ベース)と知り合ったことなんだ。最初はただ音楽好きの友達という感じだったけど、同じタイプのバンドが好きだということで意気投合した。日本のサイケデリックなハード・ロック、それからドイツのクラウトロック、それから昔のガレージ・ロックとかね。フラワー・トラベリン・バンドやブルース・クリエイション、ASHRA TEMPELやGURU GURUを大好きだったんだ。その頃アイゼイア・ミッチェル(ギター)はサンフランシスコに住んでいたけど、たまに家族に会いにサンディエゴに来ていた。それでマイクが俺とアイゼイアを誘って、ジャムをしてみることにしたんだ。それまでアイゼイアと面識はあったけど、彼がギターを弾くのを見たことがなかった。最初に集まったとき、LED ZEPPELINとBLACK SABBATHの曲をプレイしたんだけど、その合間にインストゥルメンタルの即興ジャムをプレイしたんだ。凄く爆発的なフィーリングで、この3人でバンドを組むべきだと確信した。そうして結成したのがEARTHLESSだったんだ。

●アメリカの西海岸はサイケデリック・ジャム・バンドの本場ともいえるのに、日本やドイツのバンドから影響を受けたというのが面白いですね。
2001年当時、そういうバンドは西海岸にいなかったんだ。FU MANCHUやNEBULAのようなストーナー・ロック・バンドはいたけど、俺たちが目指しているコズミックで“向こう側”の音楽をやっているバンドは皆無だった。でも8、9年前、マイクと俺でサンディエゴにThirsty Moon Recordsというレコード店をオープンしたんだ。他の店にはないようなレコードを扱っていて、そういう音楽を好きな若者たちの溜まり場になった。そうしてひとつのシーンが形成されていったんだ。最近ではサンディエゴから良いサイケデリック・ハード・バンドが幾つも出てきたよ。SACRI MONTIはそのひとつだ。このバンドのギタリストが15歳のとき、俺がギターを教えたんだよ。JOYやRED OCTOPUS、HARSH TOKEも良いバンドだね。

●“他の店にないようなレコード”というのは、どんなものでしたか?
さっき挙げたフラワー・トラベリン・バンドやブルース・クリエイション、スピード・グルー&シンキ、それからLEAF HOUND、MAY BLITZ…俺たちにとって、日本のロックは重要なルーツのひとつなんだ。だからEARTHLESSが日本でプレイすることは、バンドにとってゴールのひとつだ。すごく真剣に捉えているし、EARTHLESSとしてプレイするのを楽しみにしている。

●Thirsty Moon Recordsは閉店してしまったのですか?
うん、2013年12月に閉店したんだ。決して赤字が出ていたわけではないけど、ツアーに出ることが多くて、店員を雇うほど余裕があるわけでもなかったんだ。一時期俺はEARTHLESS、ROCKET FROM THE CRYPT、HOT SNAKES、MANNEKIN PIS、BATTALION OF SAINTSと、5つのバンドに同時に在籍して、忙しかったんだ。残念だけど、地元のロック・シーンに貢献できたと思うし、次のステップに行く時が来たんだよ。レコード店を維持するのは大変なんだ。サンディエゴの老舗レコード店でLou’s Record Shopというのがあるけど、やっぱりビジネスは楽じゃないみたいだからね。

●マイクやアイゼイアは別のバンドで日本を訪れたことがありますか?
いや、まだなんだよ。だから彼らは俺以上に、日本に行くことに執念を燃やしているかも知れない(笑)。俺たちは日本のハードコアも好きなんだ。LIP CREAMやG.I.S.M.、OUTOとかね。

●ステージ・パフォーマーの視点から、EARTHLESSのライヴをどう説明しますか?
俺たちのジャムは単なるダラダラした即興ではなく、常に3人だけの化学融合があって、その枠内でフリーダムがあるんだ。俺とマイクはサンディエゴ、アイゼイアはサンフランシスコ在住だから、ほとんどリハーサルをすることがない。だから常に一触即発のスリルがあるし、二度と同じライヴをすることがない。毎晩異なっているから、何回見ても楽しめると思うよ。何度も練習した方がライヴが光るバンドもいるし、直前に顔を合わせてすぐにプレイした方がうまく行くバンドもいる。EARTHLESSは後者なんだ。たぶん日本でのライヴの前も、リハーサルはしないと思う。緊張感とアドレナリンがあふれるライヴになるだろう。

●EARTHLESSの楽曲はどの程度、構成されたものなのでしょうか?
曲によるね。「Violence Of The Red Sea」の前半部はかなりキッチリ書いたもので、中盤から自由に羽ばたいていく。『FROM THE AGES』では「Uluru Rock」はほとんどがインプロヴィゼーションだし、「From The Ages」のドラム・パートもその場でプレイしたものだ。完璧な形にアレンジするよりも、ファースト・テイクの緊張感を重視したんだ。とはいっても、『FROM THE AGES』は俺たちにしてはずいぶん練り込んだアルバムだ。ライヴになると、異なったレシピになるけどね。時には2曲をまとめて、メドレー形式にしたりもするんだ。

●「From The Ages」はアルバムに先駆けて、ライヴ盤『LIVE AT ROADBURN』(2008)に収録されましたが、両ヴァージョンに込めた気持ちはどのように異なりますか?
『LIVE AT ROADBURN』のテイクは、ほとんど初演だった。この曲にはすごく可能性があったし、3人でジャムをするだけでなく、テクスチャーを加えてみたかった。それでスタジオでレコーディングしたんだ。かなり異なったアレンジになったし、どちらも気に入っているよ。

●あなたが最高だと思うジャム・バンドは?
最近のいわゆるジャンルとしての“ジャム・バンド”はあまり好きじゃないんだ。それよりもLED ZEPPELINやジミ・ヘンドリックスのライヴ・ブートレグで聴けるジャムが好きだな。彼らはその場で曲を書いているようなんだ。『LED ZEPPELIN DVD』に入っている1970年のロイヤル・アルバート・ホール公演と、数ヶ月後のヴァンクーヴァー公演を収めたブートレグ『MUDSLIDE』を聴くと、同じ曲でもまるでアレンジが異なっているのに驚く。ジョン・ボーナムは酔っているようなプレイだけどね(苦笑)。ジミのライヴは昔ブートレグで聴いたものもオフィシャル化されたりしている。モンタレー・ポップやウッドストックの音源は定番だけど、やはり素晴らしい。彼らは本当に最高のジャムを聴かせるね。

●ジミを筆頭に1960年代のサイケデリック・ロック・ジャムはドラッグ・カルチャーと結びつけられましたが、EARTHLESSの音楽にとってドラッグはどの程度重要なものですか?
まったく重要ではないよ。一切キメなくても生活に支障は無いし、ライヴ前にも何もやらない。昔のSLEEPみたいに120%ストーンドな状態でステージに上がるのが儀式だったバンドもいるけど、俺たちはそうではないんだ。ストーナー・ロックではなく、コーヒー・ロック、あるいはバーベキュー・ロックだよ。

●THE GROUNDHOGSの「Cherry Red」をカヴァーしていますが、彼らからも影響を受けてきましたか?
うん、『SPLIT』(1971)は最高だね。実は最初から「Cherry Red」をカヴァーしようとしたのではなく、元々はオリジナルのインストゥルメンタル曲だったんだ。でも「Cherry Red」のリフやヴォーカル・ラインを加えてみたら、凄くクールな仕上がりになった。それで「Cherry Red」としてプレイするようになったんだ。あまりカヴァーはやらないんだ。THE GROUNDHOGSの「Mistreated」は何回か演ったよ。『BLUES OBITUARY』(1969)っていうアルバムに収録されている曲だ。

●ETERNAL ELYSIUMとはどのようにして出会ったのですか?
2003年ぐらいかな、彼らがサンディエゴにツアーで来たとき、一緒にショーをやったんだ。ETERNAL ELYSIUMとEARTHLESS、そしてDIXIE WITCH、WITCH MOUNTAINというラインアップだった。それから数年して、彼らが戻ってきて、ロサンゼルスで一緒にやった。まず彼らがショーをやって、その後に俺たちの出番だったけど、警察が来て中止させられてしまったんだ。ETERNAL ELYSIUMのライヴはモダンなドゥーム・サウンドと1970年代初頭のジャパニーズ・ロックの味わいがあって、大好きなんだ。禅の瞑想とロックの攻撃性を兼ね備えているんだよ。彼らとは意気投合して、いつか一緒にツアーをやろうと話し合っていた。それが実現したのが2014年1月のオーストラリア・ツアーだった。そのまま日本に上陸する筈だったけど、どうしても行けなくて、残念だったよ。

●日本のコンテンポラリーなシーンについて、どの程度知っていますか?
オースティン・サイケ・フェストで幾何学模様とBO NINGENを見て、とても気に入ったよ。あとACID MOTHERS TEMPLEと何回かショーをやったこともあるし、俺たちはみんなHIGH RISEや裸のラリーズのファンだ。

●ジュリアン・コープ著の『ジャップロックサンプラー』は読みましたか?
もちろん!」彼がその前に書いた『Krautrocksampler』も読んだよ。この2冊によって多くの人達が日本やドイツのアンダーグラウンド・ロックに目覚めて、かつてレア盤だったアルバムが再発されたりしたことは良かったね。

●彼はEMERSON LAKE & PALMERのことをボロカスに言っていたりして、ずいぶん趣味が偏っていますよね。
彼は好きなものと嫌いなものの区別がはっきりしているから、そのあたりを念頭に置いておかないと、客観的なディスク・ガイドじゃないからね。

●ジュリアン・コープの音楽作品は聴いていますか?
ソロのアルバムはあまり聴いていないんだ。でも彼がバンド形式でやっているBRAIN DONORはマイクが持っていて、聴かせてもらった。すごくクールだったよ。

●EARTHLESSはSilver Current Recordsから『LIVE IN GUADALEST』をリリースしましたが、このレーベルとの関係はどんなものですか?
Silver CurrentはHOWLIN’ RAIN / COMETS ON FIREのイーサン・ミラーのレーベルなんだ。アイゼイアがHOWLIN’ RAINの『THE RUSSIAN WILDS』(2012)でギターを弾いてたり、繋がりがあるんだよ。俺自身はイーサンとは数回しか会ったことがないけど、ナイスガイっぽいし、仲間だと思っている。

●他に共感を感じるバンドはいますか?
WITCHとかJOY、RADIO MOSCOW、SAVIOURS、ANNIHILATION TIME…解散してしまったけど、DRUNK HORSEは仲間だった。

●ところでルバルカバ Rubalcabaという名前はどこ系ですか?
ヒスパニック系だよ。俺の母方の家族はメキシコとインディアンの血が混じっているんだ。


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