LOCRIAN / MAMIFFER Email Interview 2012.2




コラボレーション・アルバム『BLESS THEM THAT CURSE YOU』発売記念、LOCRIANとMAMIFFERのメール・インタビューです。

日本盤CDのライナーノーツを山崎が書くことになったのですが、より深い内容にするべく、両グループのメンバー達にインタビューを行うことになりました。
ただ、スケジュールの関係で電話インタビューなど直接取材することは叶わず、メール・インタビューを行うことに。
MAMIFFERのフェイス・コロッチアとアーロン・ターナー、LOCRIANのアンドレ・フォワジーが回答してくれました。
とても詳しく回答してくれて、一部はライナーノーツに使用しましたが、使わなかった部分も多く、もったいないので完全ヴァージョンを公開します。
この記事によって、『BLESS THEM THAT CURSE YOU』に対する理解がより深まることを願っています。日本盤CDライナーノーツとあわせて、読んでいただけたら嬉しいです。

当初MAMIFFERはフェイス主導のプロジェクトであって、夫のアーロンはサポート的な役割というイメージがありましたが、ISIS解散後はアーロンの"本業"のひとつとして改めてクローズアップされることになりました。2012年9月にはEARTHジャパン・ツアーのスペシャル・ゲストとしての再来日も決まり、そのキャリアにおいてさらに重要な位置を占めることになると思われます。
一方、シカゴのLOCRIANはこれまで『DRENCHED LANDS』(2009)、『TERRITORIES』『CRYSTAL WORLD』(共に2010)、『THE CLEARING』(2011)といったアルバムを発表してきましたが、日本盤がリリースされるのはこれが初めて。ヘヴィな要素を含むドローン/アンビエント・サウンドは高く評価されており、これからさらに知名度を上げていくことになるでしょう。

なお、このメール・インタビューは記事として読ませることを前提としておらず、ライナーノーツ原稿用の資料として行ったものなので、読み物としては不完全なものですが、あえて改変することなく、そのまま日本語にして掲載します。


(メールインタビュー:山崎智之/uploaded 2012.6.5)
(感謝:デイメア・レコーディングス



  『BLESS THEM THAT CURSE YOU』


<第1部: MAMIFFER>

●このコラボレーションは、どのようにして始動したのですか? お互いのことを初めて知ったのはいつ、どのようにしてですか?

Faith: アーロンは2年前からLOCRIANの音楽を聴いていて、アンドレとレコードを交換してきた。私は『RAIN OF ASHES』がとても気に入っていて、憂鬱な秋と冬のあいだ、ずっと聴いてきた。それで彼らにコラボレーションを打診してみた。そうすることに意味があると思ったからね。

Aaron: LOCRIANは何年か前、アルバムのプロモーション盤をHydraHeadに送ってきたんだ。すごく気に入って、彼らの他の作品を探すようになった。それと同時に彼らに連絡をとって、彼らの作品を楽しんだから、彼らさえ良ければリリースする作品をトレードしようって申し出た。それが発端で連絡を取り合うようになって、今回のコラボレーションに至ったんだ。

●これまでLOCRIANとMAMIFFERがステージ共演したことはありますか?

Faith: ステージ共演をしたことはない。ただ、今まで4回、同じライヴ・ショーに出演したことがある。

●『BLESS THEM THAT CURSE YOU』の制作過程について教えて下さい。 アルバムの曲は”書かれた”ものでしょうか?それともインプロヴィゼーション?

Faith: ほとんどの曲はスタジオでのインプロヴィゼーションだった。自宅にはない機材がElectrical Audioスタジオにあったから、サウンドのさまざまな実験を行うことが出来た。スタジオに入る時点で3曲を書いていたから、それを基に「Corpus Luteum」「Lechatelierite」「Metis / Amaranthine / The Emperor」を書いた。最後の曲については、既に歌詞とメロディを書いていた。

Aaron: フェイスの言うとおり、一部を除いて、ほとんどの曲はスタジオで書いた/即興で仕上げたものだった。2人以上でプレイしたらどんな結果を生み出すか、事前に考えずに書いて、お互いのアイディアを交換し合って仕上げた曲もある。その他はそれぞれが持ち寄ったシンプルなアイディアを、スタジオで完成させていった。

●アルバムを作り始める前から、特定の方向性をイメージしていましたか?

Faith: サウンドの実験性とフィーリングを重視すること、それにまだ会ったことがなかったから、お互いのことを知ろうと話し合っていた。それが主な方向性ね。歌詞とアートワークのコンセプトは天気、それからさまざまな力について表現している。

●LOCRIANはヘヴィ・ロック的な要素を取り入れていることでも知られています。アーロンが元(?)ヘヴィ・ロック・ミュージシャンだったことは、コラボレーションに役立ったでしょうか?

Aaron: アルバム中ヘヴィ・ロック/メタル的なパートは、俺が書いたものがあるけど、自分の過去がコラボレーションに役立ったかは判らない。そのパートは気に入っているけど、我々を結びつけることに最初に貢献したのは、フェイスが書いた2曲のピアノ・パートだった。あのパートがなければ、どんな方向に向かっただろうか。俺が書いたヘヴィなギターのパートも彼女のピアノが源になっているし、あのパートがすべての起動力になったといえる。

●アルバム収録曲について説明して下さい。

1) In Fulminic Blaze

Aaron: この曲はアンドレがスタジオで書いたアコースティック・ギターのパートを中心にして、全員で組み立てていったものだ。確かアンドレはインスピレーション源か基準点として、CURRENT 93に言及していたと記憶している。この曲の前半を聴いて、エンディングが浮かんだんだ。そうして(LOCRIANの)スティーヴン・ヘスと俺で、エンディングの基となるパートを録音した。お互いのアイディアに対する偶発的な反応は、アルバム制作の作業全般において勇気づけられ、また大きなチャレンジでもあった。

2) Bless Them That Curse You

Aaron: フェイスも俺も、この曲ではプレイしていないんだ。他のみんながスタジオ・ルームで闇の旅路に出ているあいだ、スタジオ・モニターから噴出する霧のような放射物に耳を傾けていただけだ。今でも誰が何をやったか知らないけど、それが良いんだ。個人の領域を超越して、ひとつのものを作り上げるということだからね。

3) Corpus Luteum

Aaron: フェイスと(OAKEATERの)アレックス・バーネットがトラッキング・ルームで一緒にプレイを始めたんだ。そうして曲が生まれた。偶発的に曲が生まれる、その場にいるのは、最高の気分だった。彼らが曲を書こうとしていたのかも判らないけど、よくリハーサルされたアイディアのように聞こえる。彼らは他にも2曲ぐらいインプロヴィゼーションによるデュエットを書いたけど、残念ながら、レコーディングされたのはこの1曲だけだった。

4) Second Burial

Aaron: みんなが別の曲をレコーディングする準備をしている最中、俺は別の部屋で、それまでやったことのなかったギターのチューニングを試していた。そのチューニングがある意味、この曲のインスピレーションとなったんだ。それぞれの音同士がぶつかり、崩し会う関係が、”ブロークン”なドラムスを加えるというアイディアへと繋がっていった。俺はそのアイディアをスティーヴンに話して、それが曲の原型になったんだ。ランドールがミックスしたことで、この曲はさらに明確な形をとることになった。彼はいろんな楽器のプレイから反応されながらその場でミックスして、アレンジを築いていったんだ。

5) Lechatelierite

Faith: この曲はグランド・ピアノとテープ・サンプルをスティーヴンがマニピュレートしたもの。サンプルはツアー・バンの屋根にヒョウが当たるのを、私がハンドヘルド・レコーダーで録った。

6) Metis / Amaranthine / The Emperor

Faith: この曲にはさまざまな感情が込められていて、ミックスするのが一番難しかった。スタジオでコラボレーションを始める前にピアノとヴォーカルによる曲の骨子を書いていたせいで、曲と深く繋がっていた。とてもエモーショナルで、繊細な曲ね。アーロンが描写している題材はとてもパーソナルなもので、聴いていて辛くなるときもある。この曲はミックス作業のとき、両バンドで意見が紛糾して、アルバム制作の重要な道標となった。

●『BLESS THEM THAT CURSE YOU』というタイトルは、誰が考えたのですか?そのタイトルは、音楽とどのように呼応していますか?

Faith: いくつか候補があったけれど、私がこのタイトルを考えた。それぞれの曲のタイトルに、どの語句を使うか、全員で話しあって、みんなの総意で決定した。このタイトルはMAMIFFERとLOCRIANという2つの個性が同時に存在する不思議な二面性を表現している。例えばプラスイオンがマイナスイオンに転じるような...ね。

●アルバムのパッケージについて教えて下さい。デザイナー、アーティスト、CDとアナログ盤のフォーマットなど。

Faith: 私がすべてのデザイン、写真、絵画を担当した。写真の一部(ジャケットの雷など)は、LOCRIANと行ったアメリカ中西部ツアーとレコーディング・セッション時に撮ったもの。絵画はこのアルバム用に描いた。

●アルバム発表にあわせて、MAMIFFER / LOCRIANとしてのライヴを行う予定はありますか?

Faith: いつかやる可能性もあるけど、現時点では予定はない。

●アルバムに収録されなかった楽曲はありますか?

Aaron: スタジオで書き始めて、後で完成させようと考えていた曲が1曲ある。他の作業が終わって、俺が自宅でミックスをしようと持ち帰ったけど、結局うまくいかなかった。とても良いサウンドではあったが、他の曲にあるような”流れ”がなかったんだ。

●今後、コラボレーションは続けていくのでしょうか?

Aaron: ”MAMIFFER & LOCRIAN”として一緒にやる計画は今のところないけど、いずれジョイント・ツアーをする可能性はある。あと、それぞれのグループのメンバーが個人同士でコラボレートすることもあるかも知れない。

●アルバムのミックスはランドール・ダンが手がけましたが、彼はどんな貢献をしましたか?彼にはどんなサウンドを求めましたか?

Faith: ランドールをミックスに起用したのは、彼がサウンドの分離に長けていて、レコーディングに”空間”をもたらすことが出来るからだった。これまでMAMIFFERやHOUSE OF LOW CULTUREの作品で一緒に作業したことで、彼は我々の作業プロセスを熟知している。言葉を通さずにコミュニケーションを取ることが出来て、我々が求めているサウンドを直感的に察してくれる。特に指示する必要はなかった。「Second Burial」は、その場でミックスを行ったけど、彼のクリエイティヴな手腕が表れている。あのミックスを再現することは不可能ね。彼と一緒に作業していて楽しいし、良い友人よ。

●ところでISISの『LIVE』シリーズが日本で限定CDボックスとしてリリースされますが、このシリーズのコンセプトについて教えて下さい。

Aaron: もう何年も前、自分たちのライヴ・レコーディングを世に出そうと思い立ったんだ。酷い内容のものが出回っていたし、興味を持つ人々にもっと良い質のものを提供しようと考えた。ISISのライヴはスタジオでの演奏とは異なっているし、我々が気に入っているライヴのドキュメントを世に出して、バンドの異なった音楽性を見せようと思ったんだ。

●アーロンはMAMIFFERに加えてHOUSE OF LOW CULTURE、JODIS、GREY MACHINE、SPLIT CRANIUMなどのプロジェクトに関わっていますが、それらのプロジェクトで新譜を出す予定は?あるいは、新たなプロジェクトを始動させる予定はありますか?

Aaron: 今のところ、現在やっているプロジェクトはそれぐらいだけど、ウィリアム・ファウラー・コリンズとのコラボレーションも今やろうとしているところだ。おそらく、それらのプロジェクトで、新しい作品を発表することになるだろう。いずれのメンバーとも共作して楽しかったし、作品も良い出来になったから、これからも続けていきたい。新しいプロジェクトに関しては、将来的に何かをやることを数人の人々と話しているけど、今のところ具体的な予定はない。まだ具体化していないプロジェクトについては、話すのを差し控えた方が良いだろう。

●ISISの解散後、アーロンはロックのフィールドから距離をとってきました。もうロックをやることはないのでしょうか?それとも、いずれまたロックをやることになるでしょうか(ISIS再結成を含め)?

Aaron: ISISは終わった。再結成の予定はまったくない。もし今後、また一緒にやる意図があったならば、”解散”ではなく”休止”という表現を使っていただろう。
ISISの音楽が大勢の人々に届いたことは光栄に感じているし、楽しんでもらえたことは嬉しいけど、同じことを続けていくつもりはない。ISISは自分にとって過去のものだが、ISISを俺の人生において重要なものたらしめた魂、そして我々の音楽にあったエネルギーは、今でも自分に備わっている。ただ、異なったスタイルで表現を行っていくだけだ。
現在でもロックを基盤とした音楽を作っていくことには興味がある(SPLIT CRANIUMもそのひとつだ)が、ISISのように洗練された形はとらないだろう。今やっている実験的なプロジェクトの多くは、ISIS時代からやりたいと考えてきたけれど、時間や精神的な余裕がなかったものだ。


参考作品:
  『LOU LOU』
 MAMIFFER / HOUSE OF LOW CULTURE / MERZBOWの2010年3月7日のライヴを収めたCD/DVD。日本独占企画、完全500枚限定。



<第2部: LOCRIAN>


●このコラボレーションは、どのようにして始動したのですか? あなた達がMAMIFFERを初めて知ったのはいつ、どのようにして?彼らの音楽をどう感じましたか?

Andre: アーロンと俺はお互いの音楽を聴かせあったりして、しばらく前から知り合いだったんだ。アーロンはMAMIFFERの作品を送ってくれて、すごく気に入った。あと、俺たちのプロジェクト両方とも、ミルウォーキーのUtech Recordsからリリースされていたということもあった。2011年の夏、『Utech Records』フェスティバルに出演するためにLOCRIANは中西部に行く機会があって、そのとき一緒にツアーをする話が持ち上がった。
コラボレーションを提案したのはアーロンだったと記憶しているけど、アルバム1枚を作ることになるとは思わなかった。話し合いが進むにつれ、いくつかのレーベルがサポートしてくれることになって、レコーディングが実現したんだ。

●これまでLOCRIANとMAMIFFERがステージ共演したことはありますか?

Andre: 一度もなかった。初めて一緒にプレイしたのは、アルバムのセッション初日だったんだ。アルバムの大半を仕上げてから、何度か対バンをしたけど、リハーサルをする機会もなかったし、ステージ共演をするには至らなかった。

●『BLESS THEM THAT CURSE YOU』の制作過程について教えて下さい。 アルバムの曲は”書かれた”ものでしょうか?それともインプロヴィゼーション?

Andre: 完全なインプロヴィゼーションの部分もあったし、緩く書かれた部分もあった。アルバムの一部は、スタジオで書かれたんだ。だから事前に書かれたわけでもないし、まったくのインプロヴィゼーションというわけでもなかった。

●アルバムを作り始める前から、特定の方向性をイメージしていましたか?

Andre: ヘヴィなエレクトロニクスとパワフルなアコースティック楽器の対比を生み出したかった。

●LOCRIANはヘヴィ・ロック的な要素を取り入れていることでも知られています。アーロンが元(?)ヘヴィ・ロック・ミュージシャンだったことは、コラボレーションに役立ったでしょうか?

Andre: ヘヴィ・ロックに限定することなく、アーロンとフェイスが経験豊富であることは、作業をより効果的にして、自分たちが誇りに出来る作品を生み出すことに貢献したと思う。

●アルバム収録曲について説明して下さい。

1) In Fulminic Blaze

Andre: この曲の始まりは、テレンスとアーロンが異なったアプローチをとりながら接近していくさまを描写している。最初はハーシュで、ヘヴィなアコースティック楽器が入ってくるんだ。曲が進むにつれ、劇的に変化していき、ヘヴィなギターがより直接的なパーカッションと呼応していく。曲にはカスミがかかっていき、パワフルなエンディングを迎える。アコースティック・ギターをフィンガー・ピッキングで弾いてレコーディングするのは、俺にとって初めての経験だったし、大きなチャレンジだった。やりやすい領域に留まることなく、自分自身を追い詰めていったけど、そうして良かったと思う。

2) Bless Them That Curse You

Andre: この曲は、GOBLINを連想させると思う。シンセサイザーがメロディを奏でて、ギターはアクセントを加える役割を果たしている。

3) Corpus Luteum

Andre: フェイスが最初のアイディアを持ってきた曲。緊張感があって美しく、不安をかき立てるテープ・マニピュレーションでエンディングを迎える。

4) Second Burial

Andre: とても陰鬱な曲だ。シカゴの空が10月になると灰色になって、5月までずっと灰色のまま...という様子を思い起こす。また、雨が降り続いて、止むことがない日々も彷彿とさせる。

5) Lechaterierite

Andre: アルバムの曲作りとレコーディングを思い出させる曲だ。バックのノイズのサンプリング音源は、MAMIFFERのバンがシカゴに向かう途中にエンストした時のものを使っているからね。レコーディングを始める前日、すごい嵐だったんだ。

6) Metis / Amaranthine / The Emperor

Andre: アルバムで一番気に入っている曲。最初のセクションはシンプルだけど、すごく効果的だ。とてもエモーショナルで、フェイスのヴォーカルがシンプルでパワフルだ。全編通して聴くことで、より素晴らしいものに聞こえる。曲が進むにつれ、少しずつ変化していき、音が幾重にも重なっていく。アルバムで最もヴォーカルがフィーチュアされている曲だが、最後まで聴かねばならない。
中盤でハーシュなエレクトロニクスが曲を乗っ取り、アルバムで最もヘヴィなパートに突入していくのが気に入っている。ヘヴィなパートはあまり直接的に過ぎず、散発的なドラムス、そしてあちこちから取り囲むノイズが盛り上げていく。

●『BLESS THEM THAT CURSE YOU』というタイトルは、誰が考えたのですか?

Andre: タイトルはMAMIFFERが考えたものだ。

●アルバムのパッケージについて教えて下さい。デザイナー、アーティスト、CDとアナログ盤のフォーマットなど。

Andre: フェイス・コロッチアがデザインを手がけて、写真も撮っている。

●アルバム発表にあわせて、MAMIFFER / LOCRIANとしてのライヴを行う予定はありますか?

Andre: いつの日かステージ上でコラボレーションをする可能性もあるけど、住んでいる地域が違うから、すぐやるというのは物理的に難しいと思う。

●アルバムに収録されなかった楽曲はありますか?

Andre: アルバムに収録されなかった未完成の曲がひとつあった。

●今後、コラボレーションは続けていくのでしょうか?

Andre: 今のところ、特にない。MAMIFFERとの作業は楽しいものだった。彼らは素晴らしい人たちで最高のアーティストだけど、住んでいるのが遠くなんだ。だからまず、LOCRIANとしての新作に専念するつもりだ。

●アルバムのミックスはランドール・ダンが手がけましたが、彼はどんな貢献をしましたか?彼にはどんなサウンドを求めましたか?

Andre: ランドールは西海岸に住んでいるから、MAMIFFERと密接に作業していた。彼には自由にやってもらったけど、彼がサウンド面でやってくれたことは、素晴らしかったと思う。

●ところでLOCRIANはPOPOL VUHの「Dort Ist Der Weg」をカヴァーして、7”シングルとして発表しましたが、彼らからどんな影響を受けたでしょうか?

Andre: POPOL VUHは最高だ。我々はクラウトロックやプログレッシヴ・ロックから多大な影響を受けている。「Dort Ist Der Weg」が収録されているアルバム(『LETZTE TAGE - LATZTE NACHTE』)は彼らの作品では有名なほうではないけれど、他のアンビエント色の濃い作品とは一線を画していて好きなんだ。オリジナル・ヴァージョンは全編ギターがマルチ・トラッキングされていて、すごく気に入っている。
POPOL VUHは常に危険を恐れないという点で、LOCRIANに影響を及ぼしている。それでいて、彼らは常に独特のムードを捕らえることに成功している。我々もそれを志しているんだ。

●LOCRIANの『THE CLEARING』は2011年、最も印象に残るアルバムのひとつでしたが、LOCRIANの音楽をまだ知らないリスナーに紹介するとしたら、どのように説明しますか?

Andre: 『THE CLEARING』を気に入ってくれて嬉しいね。LOCRIANの音楽を説明するのは難しいんだ。アルバムの全4曲は、それぞれ全く異なっているしね。俺は子供の頃から、曲ごとに異なったフィーリングのあるアルバムが好きだった。ただ、『THE CLEARING』には、アルバムを総括するムードも貫かれていると思う。
『THE CLEARING』はアナログ盤LPに収まることを前提としていたから、比較的短い作品だ。A面には3曲が収録されていて、4曲目よりもコンパクトな仕上がりだ。A面の最初と最後の曲はアコースティック楽器をフィーチュアしている(ピアノと12弦ギター)けど、それぞれの曲にさまざまな要素を加えて、新しい、サイケデリックなサウンドにしている。
A面の2曲目「Augury In An Evaporating Tower」ではArpのAvatarという、ヴィンテージのギター・シンセを使っている。他の曲よりもメタル的な雰囲気がある曲だけど、メタリックなギター・パートを排除することで、何故メタル的に聞こえるのか判りづらくしている。
B面は「The Clearing」1曲のみが収録されている。シンプルだけど効果的な曲で、ゆっくりと聴く人に染みいっていく曲だと感じている。一気に聴くことで、最大の効果を得られる曲だろう。幾重にも重なったサウンドが徐々に変化していき、じっくり聴き入ることで、色彩が見えてくるだろう。

参考作品:
  『CRYSTAL WORLD』
 J.G.バラードの作品からインスパイアされ、音世界を拡げていった2枚組アルバム。


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