BORIS: SMILE

ボリスの新作『SMILE』が出ました。というか10日ぐらい前に出ています。

実際のところ、彼らの音楽は自分と相性が良いんだか悪いんだか未だによく判らないのでした。

彼らの音楽を初めて聴いたのは1998年だか。『AMPLIFIER WORSHIP』が最初でした。でもライヴを見たのはしばらく経ってからで、1999年4月のMELVINS来日公演のサポートを務めたときには見ていません。その日はピーター・グリーンのライヴがあって、ダッシュで移動したらちょうどMELVINSがFLEETWOOD MACのカヴァー「Green Manalishi」をプレイし始めたという、あらゆる音楽は地続きだということを象徴する出来事に遭遇したのを記憶しています。

それでボリスの初ライヴ観戦は少し遅れて、1999年後半となりました。まだ『FLOOD』は出ていませんでした。『AMPLIFIER WORSHIP』の音を期待していたら『HEAVY ROCKS』の曲をやっていて、そのギャップにひっくり返ったのを記憶しています。「Dyna-soar」は今でも一番好きな曲のひとつです。イエー。

まあ出会いからしてそんなだったので、ボリスには常にどう驚かせてくれるか?という期待が伴うのです。去年のリリース・ラッシュはどれも路線が異なっていて、次は何をやらかしてくれるのかという期待と、予測を外されるマゾ的な快楽に毎月浸ることが出来ました。死ぬまで毎月リリースしてくれても良かったです。あんまり毎回そういうことをやっていると頭デッカチになりそうなので、途中で止めて正解なのでしょうが。

で、ニュー・アルバム『SMILE』が出たわけです。去年のいろんなリリース群を象の耳やら鼻やら尻尾に喩えるならば、遂に本体が姿を現したようなアルバムで、『目をそらした瞬間2』に入っていた「枯れ果てた先」リメイクもあったりして、なんだかいろいろ繋がって「そうかそうだったのか」と目覚める作品でした。

でもやっぱり何かをやらかしてくれる期待は裏切られることなく、象の体躯を成す部分がきわめて”J”なROCKに近いわけです。

ボリスは日本のロック・バンドなのでJでROCKなのは当然だし、歌メロ自体は昔から歌謡曲チックな部分もあったので、今更驚くことではないのでしょうが、漠然とヨーガク目線で彼らを見てきたので、なんだか目からウロコでした。その”邦楽ぶり”はPYGの「花、太陽、雨」カヴァーが浮いていないほどで、おそらく『RAINBOW』と並んで歌メロと歌詞が最もくっきり出ている作品だと思います。CDの値段も邦楽標準価格の3,000円。

当然好き嫌いの分かれる作品でしょうし、僕的には最後の無題曲後半のズズーンというヘヴィ・ドローンな部分が一番しっくり来るのですが、しっくり来ない部分に対する困惑と違和感を楽しんでいるところです。相性が良いんだか悪いんだかの二元論に陥ることなく、アンビヴァレンスをエンタテインメントにまで昇華させた作品であって、いわばリスニング・アドヴェンチャーですよ。ボリスとEARTHとかがリンクするのも、そういう部分なのではないでしょうか。

ところで新作に伴うインタビューって、やたらと「ロックを超えた何か」とか、変なレトリックをインタビュアーが弄していて極めてイヤです。Atsuo氏と話してみると確かに言葉のアジテーターとしても面白いのですが、書き手がそれに巻き込まれる必要はないわけで、アルバムがどんな音だかわからない記事が多すぎて「音楽ライターは馬鹿で糞」(意訳)と言われるのも仕方ない気がします。僕は文士ごっこよりもきちんとジャーナリストとして、読む人に伝えるべきこと伝えるよう心がけたいです。

というかあんだけ無駄に行数を使うんだったら、Atuo氏のヘアスタイルについて訊いてみた方が有意義ですよ。

投稿者:

yamazaki666

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